2012

2012/1/1
高田馬場早稲田松竹小津安二郎の映画を観た。スクリーンがぴかぴかと光っているように見え、とても綺麗だった。
長い夢を見ているような一年間だった。自明のことがすべて奇妙に感じられる。世界は不自然だ。
 
1/6
原宿。明治神宮へ初詣。御神籤を引いたら「努力しないと社会の流れから取り残される」とあった。最近風呂とテレビが怖い。捨てたい。
 
1/14
友人がニール・ヒル死後のSPKはあまり好きじゃないと言っていたが、わたしは好きなので、そうなんだねと言った。「オテサーネク」と「サヴァイヴィングライフ」を観た。「オテサーネク」は確か三度目。
 
1/21
一日寝ていた。土曜日はいつも一週間蓄積された疲労が溢れ出す。夏は毎日外出していた。家でぼうっとしているのが嫌だった。働いて働いて、終わったら夜遅くまで友人たちと街を徘徊した。或いは一人で音楽を聴きながら何時間も散歩した。今では信じられない。なるべく外に出たくない。気力も無い。形にならない思い出の海。忘れてはいけない何かを取りこぼしている。沈静化する欲望の不自然さ。もうここまで来てしまった。
 
1/29
一時間ごとに目が醒める。夢をいくつも見る。現実の数を追い越しそう。彼らの感覚を借りて知覚する。何もかもが懐かしい。知らなくても分かっている、彼らの愛するものがわたしの愛するものであることを。寂しさを飲み込んでも、真実は失われずそこにある。今日の朝日が一番美しいと言う。
 
2/19
恵比寿。和田永のライブを観た。どういう仕組みなのかよく分からないが、ブラウン管のテレビを使って演奏していた。良かった。薬がよく効いて気分が高揚し、隣に座っていた女性に「楽しいですね」と話し掛けたところ、怪訝な顔をされ無視された。
 
2/21
清澄白河東京都現代美術館。特に見たくて行った展示では無かったが、わりに退屈しなかった。ミュージアムショップに行ったら誰かのノイズ作品がかかっており和んだ。
 
2/28
「ポゼッション」を観た。薄暗い旧西ベルリンの街並み、気の触れた女、巨大なクリーチャー、脈絡の無い会話の数々。コバルトブルーは狂人の色であり、神様はわたしの中に居る。そして愛する犬は、階段の下で死が訪れるのを待っている……。
 
3/4
北園克衛の詩集を買った。最近知って、良いと思った。
 
3/10
最後にもう一度海を見たいと彼女が言う。わたしはそれを叶えてやりたいと思う。助手席に乗せ、海岸沿いの道を走る。静かに揺れる海面に太陽が沈んでいく。彼女にどんな言葉を掛けるのが相応しいのか分からない。帰りは一人で車を走らせる。来た道を辿り、出て来た場所へ戻る。
 
3/24
顔を上げると、光の粒子が春の夜霧に染み込んで浮遊するのが見え、もの悲しい。あの頃持っていた優しい言葉の群れは、もう全部捨てたよ。
 
3/25
六本木。テイトウワのDJを期せずして聴けた。
 
3/28
入谷。灰野敬二のライブ。途中少し寝た。初めてウイスキーを飲んだ。美味しかった。
 
4/6
初めてドクターペッパーを飲んだ。口にするものに好き嫌いの無い母が唯一嫌いなものとして挙げるのがドクターペッパーで、人間の飲むものでは無いと言われ育ったため、あの小豆色の缶を自動販売機で見かけるだけで居心地の悪い思いをしたものだった。それを思い切って飲んでみた。美味しくて驚いた。
 
4/17
十数年振りくらいに東京タワーを上った。階段で上ったので足が疲れた。明日は筋肉痛になっているだろう。スカイツリーより東京タワーの見た目のほうが好きだ。高い建物からの眺めはすべて同じに見える。やや高所恐怖症なのでしんどかった。
 
8/9
台湾に行ってきた。海外旅行は修学旅行で行ったニュージーランド以来だ。夕焼けが綺麗だった。でも誰も触れない。そこが良いと思った。
 
9/13
三十分程の素晴らしく良い眠りを体験した。運命は従順な者を導き、反抗する者を引き摺る。
 
10/1
深刻な未来不足。mum をよく聴いた。