2009

☪︎ ┉┉paypal https://www.paypal.me/anamnesis648

ログとして残っている日記がちょうど十年分に達した。毎日(忘れなければ)一年分掲載していこうと思う。自粛期間中の暇潰しにでもなれば幸いです。paypal良ければお願いします。この頃のサイト名は「無名の墓のために」でした。

 

 

2009/9/23
いつまでもうだつの上がらないことをぼやいて何をしたいのかと聞かれると何も無い。過去に放った無価値な一言がころころと転がって薄汚れ擦り切れ見窄らしい姿で再びわたしの眼前に現れた時、それが予想外の働きをすることがある。解答はいつでも過去にある。
 
9/28
不眠が酷くなっている。眠いのにまったく眠れない。最近、監視カメラの映像がランダムに表示されるサイトを知ったので、よく眺めている。深夜なのでほとんど誰も映ることは無い。それにも飽きたので湯を張った浴槽で目を閉じて嫌いな物を頭の中に羅列した。一日の汚れを洗い流したはずなのに身体中がべたべたするような気がして生きた心地がしない。それでも突き放さない世の中の憂き目。
古典の小テストがあると思って通学中の電車で珍しく勉強したが、あったのは英語の小テストだった。電車の窓から射すみかん色の朝日。
 
9/30
しおらしい月日、秋爽にすらうんざりする。煩わしさと悲しさの比較なんて一生出来ないだろう。他の人にとっては何てこと無い、意識しないでも行えるようなことがいつでも一大事だ。
 
10/7
台風の進路に覆われた、突風吹き荒ぶ日本列島の様子に対し、わたしの生活はすっかり安定している。普段あまりこういうことは思わないが、今年の夏はいろいろなことが身に起こった。こういう年齢ならではという感がある。そのすべてが悲しかった気も、何一つ悲しくなかった気も、同じくらいする。
 
10/9
寂しいとか侘しいとかそういった繊細さは自分には無い。当座の不幸も見当たらないのに漫然と鬱屈している。若さと季節が頭の中を最悪にする。醜さが、作り物じみた夜の帳に落ちていく。
 
10/24
右下に沈んでいく過程があまりに正しく、もはや自分の感情を識別するのすら億劫だ。発生したものを恬淡と眺める。神経の穂先が傷み、感覚が鈍麻していくのを空々しい気持ちで眺める。
 
10/29
学校から帰宅すると、母が遅い昼食をとっていた。わたしも空腹を感じたので炊飯器からご飯をよそって食べた。炊き込みご飯だった。大根の漬物を食べたら柚子の香りがした。こんなことでいちいち寂寞を覚える。
母が麦茶の入った茶碗を持って来てくれる。「最近痩せたんじゃないの」と言われる。今日は平気だったが、最近食事をしても気分が悪くなることが多いのだ。
 
11/1
朝方ようやく眠れたが二時間で目が覚めた。布団の中でうつらうつらし、十一時再び起床。寒いと呟いてぼうっとする。洗面所で顔を洗い、歯を磨く。近所の図書館でゲルニカのCDを借りる。
 
11/2
季節のせいか一日に何度も泣く。どうせ何もかもホルモンバランスなんだろうけど試しに「寂しい」と口にしたら本当に寂しくなってしまった。いろんな物事が憎らしい。鏡に映った自分の姿が醜い。今の生活を思う。明日の生活を思う。あらゆるすべてが不安だ。
 
11/4
夏のあの湿った不快な空気のうねりが消え、冬の清潔な静けさが積もって、辺りの無駄が取り払われる。不出来な脳みその中身が際立ち、目も当てられないのに、それを見ることを強制される。他でもない自分に。
 
11/12
早起きしても何の得も無い朝。食欲はあるのだが以前より食べる量が減った。今朝は味噌汁だけ飲んだ。今は毛布にくるまって久しぶりに「ナイン・ストーリーズ」を読んでいる。
もし思いついた通り、望む通りに人間らしい生活を送ればもう少しマシになるのだろうが、その分ついて回る不幸がわたしを人間的で無くすると想像し恐ろしくなる。指先から腐って発狂する。
 
11/22
午前四時。薄汚れた情緒が耳の穴からほつれた錦糸となり、するすると風も無いのに舞っている。そしてしっかり閉ざされた飾り窓の硝子の隙間を器用にかい潜り、まるで目的と意思を持った生物のように雲に隠された月を辿る。わたしはそれを見届けて、ようやく安心した気持ちで眠ることが出来る。
 
11/23
正午起床。今日こそは素晴らしい一日に、微笑んでおやすみを言える夜に、とカーテンを開いたら小雨が降っており挫ける。オムライスを作って食べる。カフェラテを飲む。「カラマーゾフの兄弟」を読む。
雨が止んだのでTSUTAYAへ。レジに持って行ったDVD五枚のうち実に三枚が十八禁で借りられず。最近は外出の折カメラを携行するようにしているが、今日は何も目星いものが見つからず撮らなかった。帰宅し、夕飯を食べ、借りて来た映画を観た。
 
12/3
冬の雨によって惨めさが強調されている。暗い色の道路を見下ろしながら歩く。自分の体が徐々に小さくなっていく。歩けども歩けどもなかなか自宅に辿り着かない。楽しげな音楽も痛々しくて気が滅入る。誰もわたしのことを知らない。
 
12/17
正午起床。読書。朝食兼昼食を食べ、ソファに座りぼんやりする。テレビでマイケル・ジャクソンの特集をやっていたので観た。晩年の彼は世界中のマスコミから馬鹿にされていたのに、死んだらこれか、と毎度思うことを思う。
 
12/24
帰宅。コンビニで買った肉饅を食べる。少しだけ眠る。起きてから鳥の下半身が焼かれたものだのショートケーキだのを食べ、炭酸の入った飲み物を飲んだ。今から志望校の過去問を解き、終わったら風呂に入る。その間にクリスマスを迎え、夜明け前に就寝、二時間ほどで起床し、サンタクロースは来ず、またいつものように学校へ向かう。
 
12/26
雄山荘が焼けてしまった。小説ではきちんと消し止めたのに。

-

小学生の頃、友達が居なかった。虐められていたわけでは無かったはずだが、休み時間はいつも一人で過ごしていた。今なら図書室で読書でもして時間を潰すんだろうが、当時は読書の習慣がほとんど無かったので、ひたすら黒板を綺麗に磨くか、体育館裏の桑や柘榴の実を食べるか、保健室で保健室登校のみっちゃんの描く絵を遠くから眺めるか、というのが主な過ごし方だった。みっちゃんは一度友達になりかけたが、両親が離婚して母方の実家がある青森県に引っ越してしまった。彼女には歳の離れた兄が居て、「攻殻機動隊」や「稲中卓球部」などをよく貸して貰った。わたしにも兄が居るが、三つしか違わないので青年漫画を読むのは新鮮だった。
理由も、いつの出来事だったのかも覚えていないが、一度だけクラスメートの家に遊びに行ったことがある。通っていた小学校は繁華街の中にあり、周りに民家がほとんど無かったため全学年一クラスのみで、さすがにいつも一人で居るわたしを憐れに思い誘ってくれたのかも知れない。Mという子の家で、Rも一緒だった。玄関で靴を脱ぎながら、他人の家は自分の家と全く違う匂いがするものだなと思った。Mは母親と二人暮らしで、母親は働きに出ていて居なかった。RがMに白い箱を渡した。手作りのブルーベリーパイだと言った。友達が居ないから、誰かの家を訪う際は手土産を持っていくという習慣があるのをわたしはその時知らなかった。Mの部屋に通され、飲み物を持ってくるから寛いでいてと言われた。Mはたまに話し掛けてくれるが、Rとはほとんど会話したことが無かった。幸い彼女はよく喋る子供だったため、適当なところで相槌を打っていれば良かった。しばらくすると盆に紅茶茶碗とブルーベリーパイを載せたMが戻って来た。折りたたみ式の小さな白い卓の上にそれらを置き、各々食べ始めた。「美味しい?」とRがすかさず訊いた。砂糖の味もブルーベリーの甘みも全くせず、べちゃべちゃしていてとても食べられたものでは無いな…と答えに窮していると、Mが「うん、美味しいよ」と言ったのでRは気を良くし微笑んだ。次いで二人はクラスの好きな男の子の話、嫌いな女の子の悪口、浜崎あゆみモーニング娘。、ジャニーズタレント、流行りの少女漫画、なんとか言うテレビ番組の話などをした。その間わたしは一言も発さず、べちゃべちゃのブルーベリーパイを食べ続けた。徐々に頭がぼんやりし出し、目の前の景色の遠近感が喪失していくのだけが分かった。わたしは立ち上がり、「ごめん、帰る」と言ってMの家から走って逃げた。
家の近くにあるT公園になんとなく向かった。転がっていた石で花びらや蟻を磨り潰して遊んでいたところ、クラスメートのWくんがわたしに気付き話しかけて来た。泥のついたサッカーのユニフォームを着ており、練習の帰りなのだなと思った。「面白いジジイが居るから来て」とWくんに言われついて行った。T公園は林のような一角があり、そこには何十人ものホームレスが生活をしていた。冬場に凍死体を見たことも何度かあった。Wくんが紹介してくれたジジイも勿論ホームレスだった。肌も服も黒ずんでいたがよく見るとそこまで年老いておらず、自分の父親とそう年齢が変わらないくらいに見えた。連れて来られるなり、「英語教えてやろうか?」と言われた。わたしが返事する前に、ジジイは腹に巻いていた新聞紙を掲げ「新聞紙はニュースペーパー」、カラスを指差し「カラスはクロウ」と言った。どうでもいいなと思ったが、Wくんは興味津々の様子だった。それが嬉しかったのか、彼は「良いもの見せてやるよ」と言い一度ブルーシートで出来たテントに引っ込み、中から十冊近い漫画本を抱えて出て来た。「欲しけりゃ一冊ずつやるよ」というジジイの言葉にWくんは「え、いいの?」と目を輝かせた。わたしはこんなの持ち帰ったら親に怒られるだろうし、何より汚いから触りたくないなと思い要らないと言った。するとWくんが「じゃあおまえの分もおれが貰う」と言うので、それはそれで口惜しい気持ちになり、とりあえず選んで読んで、どこかに棄てることにした。Wくんは散々悩んだ挙句一番性的な内容の漫画を選んだ。わたしはなるべく状態の良いものにしようとし、表紙に猫の絵が描いてある漫画を選んだ。かわい子ぶったのでは無く、他人が読んだ後の性的な漫画に触れる勇気はさすがに無かったのだった。ホームレスに礼を言って別れ、Wくんは自転車に乗って帰って行った。時計台の方を見ると、門限まではまだ少し時間があったので、ベンチに座り先程貰った漫画を読んだ。「ねこぢるうどん」の一巻だった。夢中で読んだが、わたしは今なお字を読むのが人並外れて遅く、半分も読み終わらないうちに文字が読みづらくなってきて、日が暮れ始めているのに気付いた。門限はとっくに過ぎていた。ただでさえ帰るのが遅くなっているのに、こんな漫画を持ち帰ったら輪をかけて面倒なことになるだろうと判断し、仕方無く公園のゴミ箱に棄てて家に帰った。普段帰宅時は開いているドアが閉まっていた。最悪の気分で何回かチャイムを鳴らすとようやく母が出、すぐに謝ったが不動明王の如き剣幕で怒られた。不貞腐れて居間に向かうと兄がファイナルファンタジーに打ち興じていた。この頃は父が居たが、まだ帰って来てなかった。ゲーム画面を眺めながら、どうせあんなに怒られるのなら漫画を持って帰って来れば良かった、と酷く後悔した。

9/8

地下鉄の階段を上がりコンビニの前を通ると、また件の男がベンチに座り煙草を吸っていた。一度は通り過ぎたが、すぐに引き返して男に声を掛けた。細い白髪がかかった耳には黒いイヤフォンが嵌め込まれていてわたしの声は聞こえないらしく、右膝を思い切り蹴ると、はっとして顔を上げた。男はイヤフォンを外し、笑いながら「久し振り」と言った。咄嗟に鞄で男の顔を殴打した。男が左手で持っていた煙草が落ちた。背後にあった窓ガラスに後頭部がぶつかる鈍い音がし、黒縁の眼鏡が吹き飛んだ。わたしより小さい体が左によろめいた隙に顔を何回も蹴る。ベンチに置かれていた缶チューハイが倒れて中身が漏れ出し、そこに歪んだ鼻梁から垂れた赤い血が混じる。窓ガラス越しに店内の明かりがわたしの顔と男の背中を照らしている。男が乾からびた手で顔を覆う。腹を蹴る。くだらない悲鳴。柔らかい脂肪の感触がする。さすがに疲れたので、足を下ろして「早く帰れよ」と言うと男はよろよろ立ち上がり眼鏡を拾い、ばかみたいにこつこつと靴の音を鳴らし去って行った。
帰宅して服を脱ぎ、台所の冷たい床に寝転がりながらペットボトルのぬるい水を飲んだ。碌に酒を飲んでいないにも拘らず吐き気を催し、すぐに立ち上がって便器に顔をつっこみ立て続けに三回吐いた。酩酊しているわけでは無いから嗅覚も正常で、耐え難い悪臭によって更に不快感が増した。消化しきれなかったえのき茸とわかめが手にはりついており、何を食べたのか思い出そうと努めつつトイレットペーパーで拭って吐瀉物と一緒に流した。手を洗い視線を上げると、目が潤み唇の赤く浮腫んだ不細工な顔が鏡に映っていた。まるでわたしが蹴られたみたいだった。台所に戻って再び寝転がり、目を瞑る。球体の箱に閉じ込められ、四方八方に転がされているような気分だった。無意味な連想をしていたら、ふと高校生の頃を思い出した。昼休みによく一人で暗い空き教室に来ていた。椅子を四つ並べてくっつけて、体を横たえる。カーテンの隙間から窓越しに白いばらの花が見える。廊下で女の子たちが笑っている声が聞こえる。ばらの花に向かって二度瞬きすると花びらが二枚燃え、もう一度瞬きするとすべての花びらがゆっくりと舞い落ちた。左耳を椅子にあててうつ伏せになる。涙が零れる。目を開ける。台所の床で眠ってしまっていた。またへんな時間に寝てしまった。吐き気は少しおさまったが体が痛かった。台風が来ている。外では雨が地面や窓を叩く音、風の強く吹く音がする。わたしは昔からこの強風の音が怖くて仕方ない。小さい頃に観た白雪姫の映画で、白雪姫が森で道に迷った時に顔のある木々が自分に襲い掛かってくるような妄想に取り憑かれるのだが、その木が発する声がこんなだったように思われてならないのだ。不安を打ち消すように虚空に向かって二度瞬きをする。もう誰からも打たれませんようにと祈る。足の先から火がつくのを感じる。

8/9

仕事を辞めるに際し、有休消化ということで約一ヶ月間休むことになった。平日の昼間の静かな映画館で映画を観たり、人の少ない電車に乗って普段行かない所へ行くぞと意気込んでいたが、体調を崩してしまい寝所で愚図愚図していたらいつの間にか週末になっていた。既に夜型に回帰しつつあるのをどうにか昼前に起床し、化粧をして外に出た。先月末、友人の結婚式に出席したのだが酒を飲んでばかりで碌に水を飲まず、中途で頭痛とひどい倦怠感を覚えこれは熱中症になりかけているなと思った。数日ぶりの外出で体力も落ちているだろうと思い、いつもはスポーツドリンクで済ませるところを今日は経口補水液なるものを買った。飲むのは初めてだと思っていたがいざ口にしてみるとなんだか嫌な感があり、原因を考える前に東日本大震災を思い出した。震災が起こった日、大学受験の合否を報告したいという友人の誘いに乗り春休みだというのにわざわざ高校へ訪れ、帰宅出来ずに学校の教室で一泊した。その際口にしたのが乾パンと経口補水液だった。乾パンの中には数粒の金平糖が入っていて、この前金平糖を食べた時にも同じ気持ちになったのを思い出した。
電車に乗って銀座へ向かった。先日銀座へ酒を飲みに行った折、同じ建物に行ってみたかった喫茶店が入っていたのを知りそこへ行った。アイスコーヒーを飲み、本を読んだ。店内は冷房がよく効いていて寒く、体が怠くなり、あまり読書に集中出来なかった。喫茶店を出て買い物を済まし、並木通りを冷やかしていると花屋があるのを認めた。たまには花の一輪でも部屋に飾ろうかという気になったが、すぐに馬鹿馬鹿しくなって止した。平日の昼間に出歩くと、妊婦によく遭遇した。この暑い中歩くのは大変だろうと思った。俄かに柄物のワンピースが欲しく思い、適当な服屋に入った。かわいらしい柄のワンピースがたくさん置いてあったがどれも自分の好みでは無く、かわりに襟の形のよいブラウスを見つけたのでそれを買った。一定額以上の商品を購入すると扇子が貰えるらしく、茶色と緑色のと選ぶよう店員に言われ、どちらもそこまで好きな色では無かったので店員が最初に開いた茶色のほうを貰った。久しぶりの他人との会話が嬉しかったのか、柄にもなく世間話のようなものを少しした。映画でも観て帰ろうかと思ったが、今やっている映画を調べる気にもならず、疲れて眠たくなってきたので帰宅した。ちょうど18時前頃の電車に乗ったせいか乗客は会社員が多く、またこれに乗る生活に戻るのを想像し陰鬱たる気持ちになった。
帰宅して間もなく眠ってしまったが、すぐに目が覚めたので先週末秋田で買ったいぶりがっこを肴に、残り物の赤ワインを飲んだ。他人と自分との間にどのような違いがあるのか判らない。

8/17

・火曜日から目の病気により自宅でジッとしている。いくつか人と会う予定があったが、いずれもこちらが連絡を入れる前に相手から都合が悪くなった旨連絡あり延期となった。約束を反故にするのは忍びなかったので良かった。人に感染するらしく外出もままならない。することと言えば読書くらいで、まあそれは健康であってもそうなのだが、長時間目を開けているとしんどくなるので大抵寝ている。たくさん夢を見る。今日は日本語を話せるオランウータンと会話する夢を見た。最初彼は話せるのを隠しているんだけど、わたしの人柄の良さに打ち解け徐々に心を開き、話してくれるようになるという心温まる内容。彼が最初にはっきり喋った文章は「ここは研究所では無いのか?」で、それに対し「林間学校ですよ」と答えた。あとわたしは下着をつけずにランニングパンツを履いているんだけど、その中が精液まみれであることに気付き、お手洗いに駆け込みトイレットペーパーで拭うという内容。アイシングみたいなザリザリ感があり不快だった。

目を覚ますと瞼に溜まっていたらしい涙が零れる。零れるというか溢れる。何ら義務を果たすこと無く誰とも会わずにひたすら趣味に打ち興じ、気が向いたら眠るという暮らしには一生飽きることが無いと思われる。常時両目が痛痒く、真っ赤に充血して気持ち悪いのに、何のストレスも無い。強いて言えば外出出来ないため酒と煙草をやれないのがストレスである。耐えかねて昨日病院に掛かった際、最寄り駅前の喫煙所で一服したが、風が矢鱈に強く落ち着いて喫煙出来なかった。加えて、病院の近くにスターバックスコーヒーがあったので久し振りにフラペチーノを買おうとし、黙って一番好きなキャラメルフラペチーノにすれば良かったのを何故かバニラクリームフラペチーノ?などという子供騙しのような飲み物を頼んでしまった。全然美味しくなくてがっかりしながら、ストローを吸ったり煙草を吸ったり、強風に煽られて嫌だった。ビールにすれば良かった。

今住んでいる所は可も無く不可も無く何の印象も無い街なのだが、この最寄り駅前にある喫煙所が素晴らしい。ほぼここのためだけに住んでいる。一般的に喫煙所というのは、プラスチックの粗末な囲いの中で大勢の喫煙者と犇めき合い狭苦しいこと限り無く、甚だ辛苦するのだが、最寄り駅前は違う。まず囲いが無い。広い。木もあるし、椅子にもなる柵がある。喫煙所を清掃するババアも掃除し終わった後プカプカ煙草を吸っている。更にそこから10分弱歩いた国道沿いにあるファミリーマートの喫煙所もまた素晴らしい。灰皿がコンビニの両脇に二つ設えてあり、すぐそばにベンチがある。吸ってくださいと言わんばかり。住んでいる理由2。友人と酒を飲み気分良く酔った帰り、このファミリーマートで缶ビールを買いベンチに座って眼前を走り抜ける車を眺めるのが好きだ。思い出すだけで心が落ち着く。ジャガーに轢かれて死ぬ。

 

・一番最初に持ったスマートフォン(確か富士通製)がOSをアップデートする度に故障していく悲しき怪物だったため、iPhoneにした今でもアップデートに抵抗があり、今の機種に変更して以来一度もしていなかった。が、本日勇気を出してアップデートした。

 

はてなブログは元々の行間が広く、改行すると1.5文字分くらいの余白が生まれるのがとても嫌だった。どうしてこんな酷いことをするんだろうと疑問で仕方無かった。なるべく改行はせず、文字をぎっしりさせたい。その方が格好いいからだ。かと言って修正するのはするので面倒、それにどうやらPCからしか出来ないらしいと分かりこれまで放置してきた(PC持っていないため。最悪会社でやろうとしていた)。が、本日試行錯誤の末修正した。

6/28

久し振りに焼き魚を食べたら喉に小骨が刺さった。唾を飲み込むたびに喉を引っ掻かれるような違和感がある。最近、新しい環境に慣れようとしたり自分はまともな明るい人間だと思おうとしたりして、親しくない人からの誘いを一切断らずにいたら人間関係のキャパシティが致命的にオーバーしたらしく疲労感が脳髄にまで達し、何を考えても最悪の結論ばかり導いてしまう。この感じは久し振りだ。それにしても未だにI'm trying real heard to be the shepherdの気分で生きているんだけどこういうのって何歳くらいになったら終わるんだろうか?というようなことを考えられるようになっただけでもかなりの成長だと思う。わたしの体は日々脳みそが得た言葉に救われている。みんなと同じようにしたい。

昨夜久し振りに悪夢を見た。目の前の男にわたしは一方的に好意を寄せているらしいが(全く見たことも無い人)、彼がベルイマン「冬の光」よろしくわたしの嫌いなところを一つずつ捲し立てていき、それを泣きながら聞くというだけの夢。何よりクソなのが、男がわたしの傷つく姿を見て興奮し途中から満面の笑みを浮かべほとんど喘いでいた点。普通に悲しいからやめて欲しかったのに。でもその夢で男が挙げた嫌いな箇所の一つに「Tシャツの趣味が悪い」というのがあって、嗚咽交じりに「もう変なTシャツ着ないから」と泣きついていたのは思い出すとやや面白い。「もっう、へっん、な、てぃー、い、シャ、ツ、着っなっい、か、ら、あ、ああっ」みたいな言い方だった。わたしは無意識裡に自分のTシャツのセンスを恥じていたのか。

というのを歩きスマホしながら打っていたら、露出狂なんて呼び方では生温いというか、露出に関してだけ狂っているのではありませんといった風情の、下半身は靴下と靴しか身につけていない後期高齢者がヨチヨチこちらに歩いて来て何やら話し掛けているようだった。わざわざイヤホンを外してやったら「この辺にトイレは無いか?」とのことで怖かったので無視して逃げた。ある程度離れたところまで来て振り返ると、結局狂人は知らない人の家の壁に向かって放尿していた。

帰宅してから喉にピンセットを突っ込み忌々しい小骨を取った。不在の対象について考える。早く何もかも元通りになりますように。

6/27

肩を叩かれて目を覚ました。地面に座っていたようで尻が冷たい。灰色っぽいスーツを着た男がわたしを見下ろして何か言ったが頭がぼんやりして聞き取れない。そのまま十秒、もしくはそれより長い時間見つめ合っていたが、男はわたしが何も反応を示さないので舌打ちをして去って行った。その後もしばらく顔を上げたままの体勢で地面に座っていた。ここはどこなのだろうと辺りを見回す。池袋駅の西口らしいことが分かる。こんな所で眠っているのは自分と浮浪者だけだった。俄かに財布の中身が気になって鞄から取り出すと、小銭しか入っていなかった。つまり、朝下ろしたはずの七万円がそっくり無くなっていたということだ。思い出したくない記憶が蘇る。つい先刻まで渋谷で酒を飲んでいた。終電はまだあったがひどく酔っており帰れそうになかったので、タクシーに乗った。タクシーの運転手はよく話す男だった。しかしわたしが一言も返事をしないでいるとバックミラー越しに一瞥をくれたのち黙った。いつの間にか寝ていて、運転手の「お客さん!」と呼ぶ声で起きた。まだ全身が酒臭く、何より眠かった。運賃を言われ、わたしは財布の中身を全て出し「これあげる」と言った。運転手は驚いた顔をして「いやいや困りますよ」と言ったがその口振りと表情は全く困っておらず、わたしの次の一言を待っているのは明らかだった。「いいから、あげるから」車の外に出る。そこからは何も覚えていない。少なくとも運転手が慌てて運転席を降り、わたしを追って金を返すようなことはしなかった。酒が抜け始める。頭が痛い。一刻も早くあの運転手を見つけ出して殺し、金を取り返そうと思った。領収書を探すが、清算を済ませず下車したのだからそんなものがあるはずは無かった。頭痛の疼きと共に殺意が肥大していく。すぐ隣でダンボールに埋もれて寝ている浮浪者に目を遣る。しかしこいつを殺したところで七万円は帰ってこない。あの運転手を殺すしか無い。だのに手掛かりは皆無で容貌もうろ覚えだ。行き場を失った殺意をうまくコントロール出来ずすぐに手を離してしまった。眠い、疲れた、何も考えたくない。今すぐ家で眠りたかったが、池袋から自宅までどう頑張って歩いても一時間は掛かる。何故自宅の最寄駅を指定しなかったのだろう。それともあの運転手がわざとここで降ろしたのだろうか。性根の腐った人間の考えることは想像する気にもならない。わたしはすべてが嫌になって目を閉じた。一切の決定を起きた後の自分に委ねることにした。

というのが丁度一ヶ月前の出来事である。起きた後の自分が下した決断は、「考えないようにする」という実に単純で哀れな物だった。わたしはそれを忠実に守り、考えないよう思い出さないように日々を過ごした。そして今日が来て、一時間ほど前、男の悲鳴というのか呻き声というのか、そんなものによって目を覚ました。目を覚ましたといっても眠りからでは無く、正気の状態から酩酊状態へと目覚めた。そこは扉が開いたままのトイレの個室だった。わたしは持ち手の青いハサミを持っていて、男は便座の蓋に覆い被さるようにして伏せていた。顔を両手で抑えており、目の辺りから血が流れていた。男は一ヶ月前にわたしの肩を叩いた男と同じ灰色っぽいスーツを着ていた。酒により冴えた頭で、彼は七万円を盗んだ件の運転手に相違無いと確信した。男は鞄の類を持っていなかったので、衣類のポケットを探ろうかと思ったが、呻き声があまりにうるさく嫌な気分になりやめた。どうせあっという間に使い切ったに違いない。そう考えるとまた少し腹が立ったので頭を思い切り三回右足で踏んだ。骨と肉が便器に打ち付けられる音がした。個室を出て汚れた手とハサミを洗うが血はなかなか落ちなかった。ハンカチで手を拭こうと鞄の中を探ると、内ポケットから二つに折られた白い封筒が出てきた。中には七万円と、タクシーの領収書が入っていた。男はまだ呻き続けている。濡れたままの手で中身を封筒に戻しながら、今夜はどこで酒を飲もうかと考え始める。